蛙は、ぬるま湯に気づいた。
ぬるま湯に気付いた蛙は、そこから飛び出した。
そして今歩いている道では、
ぬるま湯に浸かっていたときには気付かなかった、
世界の明るさと自由を感じている。
ただ、少しだけ、居心地が悪い。
そうも感じる。
「ぬるま湯よりマシだ。」
—
そう思いながら、過ごしていたある日。
分かれ道に出くわした。
蛙は、自分がどこに向かっているのか、
それは、分かっている。
そこに辿り着くためには、
今の道でも、出くわしている分かれ道でも、
どちらでもなくて、
全く違う世界の道を進まなければならない。
すぐ横の草むらを越えて。
ただ、その草むらに踏み込む勇気を、
まだ持てない蛙は、
いま出くわした分かれ道で、佇み、考えている。
その分かれ道は、蛙が辿り着きたい道の方向に進んでいる。
つながってはいないけれど。
方向は、そっちを向いている。
その先は、見えない。
—
蛙は、分かれ道を選ぶことに決めた。
—
どっちに進んだって、先は見えない。
—
分かっているのは、辿り着くための道を進むには、
草むらを越えなきゃいけない、ってことだけ。
そこにいく勇気が、まだないなら、
少しでも、近づく道を、進むだけ。
その先が見えなくたって、いいんだ。
—
この道を行けばどうなるものか。
危ぶむなかれ。
危ぶめば道はなし。
踏み出せばその一足が道となる。
迷わず行けよ。
行けばわかるさ。
一休宗純