宮部みゆきの代表的な長編ミステリー二冊『火車』(参照)『理由』(参照)を読み、綿密で深い宮部ミステリーの世界観にどっぷりとやられてしまっている。これら二作はものすごく濃くて深いので、読むとどっと疲れが出る。そんな宮部みゆきの長編ミステリー最長作『模倣犯』についに手をつけてしまった。文庫版だと五巻物になっているようだが、やたらと巻数を増やされてしまった文庫版を読むのが個人的には好きではないので、図書館で分厚いオリジナル版を借りてきて読んでいる。
上巻721ページ、下巻701ページ、合わせて1400ページという超長編である本作。一気読みなどとてもじゃないが出来ない。それは文量もさることながら、内容が重く厳しいからというのが大きい。ただでさえ影響を受けやすい性格の僕が、こんな話を一気読みしたら頭がおかしくなってしまうかもしれない。なので、少し読んで、現実に戻って現実を過ごして、また少し読む、という読み方をしている。
この「頭がおかしくなってしまうかもしれない」という感覚は、少し前に成田からイスタンブール経由ヨルダンへの機内で一気読みした町田康の『告白』(676ページ)を読んだときに感じた、あの何とも言えない感覚に似ている。実際に起きた大量殺人事件の犯人の心の闇・真実を町田節で書き綴ったロックな小説『告白』は、心して読まないと読者の心がそちらに持っていかれてしまう。本作『模倣犯』でも(特に第二部からは)、それと同じような危うさが伴う。
そんなわけで、やっと上巻を読み終わり、今日から下巻を読み始める。「面白いし次が気になって、どんどん読みたい」というのもあるにはあるが、それよりも、こんなに重たいミステリー小説はさっさと読み終えてしまいたい、という気持ちが強い。正直、読み始めたときはここまできつい読書になるとは思っていなかった。早く読み終わってしまいたいけど、一気読みすると心が持っていかれる。こんなミステリーを読むのは本当に疲れるが、今さら本を置くことなどできない。
今年に入ってから、ミステリー小説にはまっていたが、本作を読了したらしばらくミステリーの世界からは離れようと思っている。そんな気にさえさせてしまう程、本作は重厚で読者を体力的にも精神的にも疲弊させるのだ。