昨日日曜日の午前中に放映していた徳光さんが司会の報道番組のなかで、不登校や引きこもり・家庭内暴力等の問題を抱えた自分の子供を戸塚ヨットスクールに預けて教育してもらっている親が居るということを問題提起し特集していた。
戸塚ヨットスクールに関しては、以下のはてなダイアリーキーワードでも詳しく紹介されている戸塚ヨットスクール事件でも色々と話題になり知っている人も多いのでは。
このエントリーでは、戸塚ヨットスクール自体や体罰に対しての是非等を問うようなことをするつもりはなく。そういう議論は別の場所に任すとして、ここでは、昨日の番組内で紹介されていた戸塚ヨットスクールに子供を預けようとする父親の言葉や考え方に対して、個人的にどうしても納得いかない部分があったので、それについて書きたいと思う。
『子供と24時間付き合えれば何とかなるけど、それは物理的に不可能。それは仕方ない。だから預けて教育してもらう。それが私の「教育」だ。』
子供を預けようとする父親がこんなことを言っていた。確か、取材陣からの「なぜ子供を預けるのか」といった質問に対する回答だったかと思う。いくらなんでも、人の親としてこれほど無責任な発言はないんじゃないか。仕事している親と学校に行っている子供が24時間常に付き合う時間がある家庭なんてどこにもない。それでも幸せな家庭はいくらでもある。自分の子供が何か問題を抱えてしまったのは親である自分に原因があるのに、それを棚にあげて「時間がない」というみもふたもない言い訳をしている。しかもこうなってしまった原因が「子供との時間が足りない」ということを分かっているはずなのに、子供を預けるという選択肢を取っている。
そうじゃないんじゃないか。こんなことを言う前に、一時間でも一分でも一秒でも、少しでも子供との時間を増やす努力をするのが親の務めだろう。子供の傍で子供の声を聞き、自分の声を子供に届かせるために努力しよう、という気持ちを持つことが唯一といってもいい解決策なはずだ。いずれにしても、自分の子供を人に預けて教育してもらうのが自分の「教育」、なんてことは絶対にありえない。100歩どころか1000歩くらい譲って、様々な事情を抱えてしまい泣く泣く最後の手段として子供を預けることになってしまったとして、そんな状況に心苦しくなることはあっても、「それが自分の教育スタイルだから」なんてことを偉そうに言っていいわけがない。
預けれられた子供が一番思うことが、「どうして自分の親は自分をココに預けたんだろう」ということらしいが、もし今回出演してこんなことを言っている父親の声を聞いてしまったら(恐らく遅かれ早かれ聞いてしまうと思うが)子供と親の距離がさらに広がってしまうということは容易に想像がつく。『この一年で自分が成長したとしても、親との関係に全く変化は起きない』ということを預けられている子供の一人が言っていたが、正にその通り。
僕自身は、親になったことがないので偉そうなことは言えないかもしれないが、子供が問題を抱えてしまうのは全部親の責任であるべきで、その責任を「時間がない」という自分勝手な理由をつけて子供と真剣に向き合うことをせず、その結果子供が問題を抱えてしまってから「子供との接し方が分からない」とか「何を考えているのか分からない」とか、問題を抱えてしまった子供に責任があるかのようなことを言い、しまいには子供を預けるというみもふたもない選択をする、そんな親にだけは絶対になりたくない。
もうひとつ、この父親が言っていたことで許せないし理解不能なことがあった。それは、戸塚ヨットスクールで過去に暴行致死事件が起き、それが未だ大きな問題となっているという背景からレポーターが「もし預けた子供が死んでしまったらどうしますか?」という質問に対する答えなのだが、何とこの父親の答えは、
『子供が預けた施設で死んでしまったら、それは”彼”の運命だ』
というものだった。この答えを聞いたとき、チャンネルを変えたくなるほど気分が悪くなった。こうなってしまったのは、自分達親の責任ということを本気で考えていれば、子供を本気で愛しているなら、こんな言葉は絶対に出てこないはずだ。どんな運命を背負って生まれてきたとしても、子供が死んでしまって「運命だった」なんて言える親がどれだけいるんだろうか。何か理由をつけて自分の気持ちを整理するために「運命だった」と自分に言い聞かそうとすることはあるかもしれないが、運命だろうと何だろうと、子供に生きてほしいと強く願うのが親の子供に対する当たり前の愛情であるはずなのに。
今回の特集を見ていて、子供が問題を抱える原因は全部親と周りの大人にある、ということを改めて強く思った。何か問題を抱えている子供の原因を探っていくと、必ず親に原因がある。調べたわけではないが、これは間違いないことだと思う。問題を抱えた子供をなくすためには、親と大人が変わる以外に方法がないということを親・大人が強く自覚すること。子供に愛情を持つという当たり前のことをもう一度真剣に真剣に考えること。
こういったことを改めて真剣に考えるきっかけを与えてくれた今回の特集は素晴らしいものだったと思う。『親に一番聞きたいことは、なぜ自分を預けたのか、ということ』。これは取材した子供たちの多くが言っていたことらしいが、こんな切ない言葉をなくすためにも、我々個人個人が、子供の教育というものに、学校教育・家庭教育に関わらず、真剣に愛情を持って取り組んでいくべきなんだ。