夜の来訪者

夜の来訪者 (岩波文庫)

切れ味鋭い戯曲。読むのが速い人なら、1時間もあれば読めてしまう内容。それもいいかもしれないが、実際に劇を楽しむつもりで、じっくりと頭のなかで音読しながら読むのも乙。僕はそうやって2時間ほどかけて、じっくりと読んだ。

頭のなかで舞台を作り、そこで自分の想像上の役者達が芝居を繰り広げている。そんなイメージで本書を読み進めた。読んだ、というよりも、本戯曲を「観た」といってもいいかもしれない。そして、「警部」が他の登場人物全員を突き刺す言葉を残して退場していくくだりからラストにいたるまでの心の闇を描いたクライマックスでは、トイレに行くことさえ出来ない。

ラスト。2時間かけて本戯曲を本物の劇さながらに観てきた観客である僕を思いっきり置き去りにする。しばらく席を立つこと(=本を閉じること)が出来ない。心の闇、社会の闇、そんなものを観せつけられたまま、あとは自分で考えることを余儀なくされる。油断していた。半端な気持ちで観ることはできない戯曲だったのだ。

気持ちが落ち着いたら、もう一度本戯曲を観てみることにする。今度は、序盤に散りばめられている伏線なども大いに楽しみつつ。

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