大人問題

大人問題

絵本作家、五味太郎氏による大人論であり子ども論でもある本書。軽い語り口で書かれてはいるが、鋭い。こんな大人にはなりたくな い、と子供の頃に思っていた「こんな大人」にいつの間にかなってしまっていることに気付き、読んでいて痛すぎる。大人にとっての子供とは、子どもにとっての大人とは。大人と子供、教師と生徒、親と子、そう簡単には割り切れない深いテーマを深くて多眼的な観察眼とシンプルな言葉で論じている本書から、考えさせられることは多い。

五味太郎氏は、子どもを「新人」「ルーキー」という言葉でとらえるのが好きだという。

ぼくは子どもをとらえるときに、「新人」「ルーキー」という言葉でとらえるのが好きです。彼ら新人、ルーキーをずっと見ていると、なんかとても楽しいのです。自分もそうだったんだけど、「こいつ、これから何をするんだろうか」という感じの楽しさ。あるいは「いつ化けるかな」という一種の緊張感。そういう見方、とらえ方、つき合い方、この社会にはあまりにも少ない気がします。(P.155)

この考え方には、思いっきり共感する。

子どもと接するなかで、大人は分かったつもりで、自分たちの経験や何かの本から得た知識をベースに、子どもを理解しようとする。そして、分かってなくても、分かったつもりになる。そうやって出来上がっていく子ども像のなかで、子どもは苦しんで、そんな子どもを理解しようとまた大人は分かったふりをする。

子どもを理解しようとする姿勢は、どんな大人でも持っているとは思うが、自分の常識だけで分かったつもりになるのは、子どもに対して真剣に接しているとはいえない。かといって、どうせ分からないからと、それを放棄するのもまた違う。では、どうするか。本書には、それをじっくりと考えるためのヒントが満載されている。

それでも、五味太郎氏はまだまだ言い足りないようだ。本書は何度か読みたいと思える良書ではあるが、続編『さらに・大人問題』も読まなければ。

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