「お客様の人生の登場人物になる」
これが本著のエッセンス。このキーワードを軸に、数多くのマーケティング本と昔ながらの地域に根差した商売手法を融合したのが、本著のタイトルでもある「超地域密着マーケティング」。そのマーケティング手法が著者の実体験を通して紹介されている。そこには、お客様との関係をいかに大切にするかという商売の本質がある。
地域における商売の基本は、やはり、お客様との人間関係のようだ。人間関係というと、何となく冷たいというか客観的な感じもするが、要は「ご近所付き合い」ということだ。その「ご近所付き合い」を通して、お客様との関係を大事にすることで、そのお客様の人生の登場人物となっていく。
妻の実家では、東京のある下町で30年近く小さな喫茶店を営んできている。まさにその地域に根差したこの喫茶店にくるお客様はほとんどが顔見知りで、マスターはほとんど全員のお客様の特徴を知っている。「この人は、この時間にきて、これを飲む」とか、「あの人は、話し出すと長い」とか。近くの商店街に買出しにいっても、みんな顔を知っているし、お互いにサポートしあっている。大きな商売をやるのもいいが、こんな風に地域に根差して、お互いがお互いを知った仲で、助け合いながら商売をしていく、というのがそもそも「商い」と呼ばれているもので、そこには「人とのつながり」が土台として存在している。
どんなに大きなビジネスをしていようとも、根本にあるのは、「商い」であり「人とのつながり」であるということを忘れてはならない。それを忘れてしまっている会社が、変な不祥事を起こしているんだろうなと思う。そういう会社の経営者は、「商い」「人とのつながり」の基本を教えてくれる本著をまず読んでみたらどうか。