イギリスから定期的に出張に来るエンジニアJが、今回の出張で奥さんを連れてきた。
Jは奥さんが来ているのにも関わらず、忙しく働いているので、昼間は奥さんは一人で東京観光をしている。彼女は、日本に来るのが初めて。今回の訪日はとても楽しみにしていたみたいだ。
だが残念ながら、彼女にとって、日本はもう二度と来たくない国になってしまったかもしれない。
というのは、彼女が一人で都内の公園を観光しているときに、とんでもない経験をしたからだ。
その日は天気がよく、ベンチに座って読書をしていた彼女に向かって、サラリーマン風のおじさんが英語で話しかけてきたらしい。最初は世間話程度だったのが、なぜかそのおじさんはどんどんエスカレートして彼女に対して、外人はどうのこうの、と罵声を浴びせ始めた。そして、しまいにはf-wordまで浴びせて去っていったらしい。
初めての異国の地で、見知らぬおじさんに自分の国の言葉で話しかけられて、安心して話を聞いていたら、急に怒り出して、最後には口に出すのもはばかれるような罵声を浴びせられる、というのを自分自身に置き換えて想像してみてほしい。もし僕がそんなことをされたら、その国を嫌いになるのはもちろん、怖くて仕方ないだろう。
Jの奥さんも、その事件があった夜は、ベッドに入っても震えて眠れなかったらしい。
この話を聞いたときに、彼女とJに対して、何とも申し訳ない気持ちになった。どうか、全ての日本人がそんな人間だとは思わないでほしい。