本の整理をしていたら、数年前に読んだ『快人エジソン―奇才は21世紀に甦る 』がでてきた。人類の歴史を変えた世紀の天才発明家の実像に迫っている本著を何気なく再読し始めたのだが、これが面白い。
全編興味深い内容ばかりの本著のなかでも、ひとつのハイライトと言えるのが、「天才とは、1%のひらめきと99%の努力のたまもの」という有名なことばの真意について書かれている部分。
世界の名言集に必ず出てくるエジソンの「天才とは一パーセントのひらめき(インスピレーション)と九十九パーセントの努力(パースピレーション)のたまものである」ということばは、彼の本心通りには解釈されていない。(P.95)
このことば、当時の新聞記者は「ひらめきだけでは天才となれず努力が肝心」と解釈し、それが現在でも広まっている。しかし、エジソンの真意は全く逆だったという。
エジソンは後に「たとえ一パーセントでも、ハイヤー・パワーの知性の存在を確認できれば、努力も実を結ぶ。それがなければ、いくら努力をしても無駄なこと。この発想のリトルピープルの声、すなわち、一パーセントのひらめきが最も重要なのだが、皆このことがわからないようだ」と語っている。
エジソンの実績を見れば、努力の人であったことは否定のしようがない。しかい、霊感(ひらめき)については、その存在が証明しにくいこともあり、重要度が一パーセントにされても、多くの人々が何となく納得したものと思われる。ところが、エジソンの考えは全く逆だったのである。(P.97)
「努力が肝心」ではなく、一パーセントのひらめきが重要でそれがなければ努力も無駄になる、というのが、エジソンの真意だった。その真意がわかると、努力の人だと思っていたエジソンのすごさは、その膨大な努力ではなく、「ひらめき」であるということがわかる。では、その「ひらめき」はどこからきたのか。エジソンは、ひらめきは脳のなかに住む「リトル・ピープル」の声だということを言っている。そして大人になるにつれて、その声に耳を傾けることが困難になるのだと。
メモ魔であるエジソンはこの「リトル・ピープル」の声を逃さず、それがどんなに小さくても滑稽でも突拍子がなくても、メモとして残していくことで、その声から発明へとつながるひらめきを掴まえていったのだと思う。エジソンが残したメモや記録は500万枚以上、アメリカで国家プロジェクトとしてそれを分析・解析している。これほど膨大なメモを残したエジソンは、「ひらめき」の重要性を深く深く理解していたのだと思う。
「リトル・ピープル」の声は、誰にでも聞くことができる。というか聞こえているはずである。ただ、その声(ひらめき)をくだらないから、小さなことだから、と聞こうとしない、記録に残そうとしないだけだ。どんなに努力しても、ひらめきなしでの努力は無駄になってしまう。努力するのは当然、そしてその努力を実にするためにも、一瞬一瞬のひらめきを聞き逃さす、書き残していくことが大事なのだ。
エジソンのかの名言には、そんな学びが込められている。