夢・目標を持ち、計画を立て、その計画を毎日の行動計画にまで落とし込み、それを着実に実行していこう、といったような自己啓発の考えの真逆をいく本著。あまりにみもふたもなく、それでいて納得いく内容ばかりで、自己啓発の王道を信じ実行している人は本著は読まないほうがいいかもしれない。
いや、むしろそういう人こそ、読んだほうがいいのかも。本著では、実際に成功を収めている人たちが、いかに自分以外の誰かや何かで成功してきたかの事例が、これでもかと紹介されている。そういう事例から、「世の中そんなもんだ」ということを知りつつ、自己啓発に取り組むのも悪くないかもしれない。
自己啓発、というのは読んで字のごとく、原則的には「自分で成功や幸せを掴む」ための考え方。対して本著では、成功とは他人から与えられるもの、と主張している。
仕事に真面目に取り組み、己を信じ、ポジティブに考えたからといって、成功の階段を上れるわけではない。じつは、成功とは、自分自身にある何かから生まれるわけではない。成功とは、他人から与えられる何か、なのだ。(P.2)
本著で紹介されている勝ち馬の見つけ方や、成功者の事例を読んでいると、なるほど確かに成功は自分以外の誰かや何かが与えてくれるものなのかも、と納得いってしまう。だからといって、躍起になって勝てそうな馬を探し始めるのは、ちょっと格好悪いな、と個人的には。
ただ、自分自身にばかり眼を向けず、もっと視野を広くもっていてもいいんだろうな、とは思う。世の中には、様々なチャンスや発見が転がっているもの。自分ばかりに眼が向いて視野が狭くなっていると、そういうものを見逃してしまうことだってある。そういうチャンスや発見との出会いは、自分の幅を広げ、人生をより楽しくしていったりもするかもしれない。
目標を決めるとは、人生の神秘と興奮を奪うことでもある。パブロ・ピカソは言っている。「自分の望みがわかっていると、おそらくそれしか目に入らない」と。(P.13)