2001年当時どん底第三セクターだったしなの鉄道を、2002年6月の社長就任からわずか二年間で黒字化し、信州のカルロス・ゴーンと呼ばれた杉野正氏による、シンプルで骨太な経営論、仕事論。
「仕事をする上で大切なのは結果」という明確なメッセージが杉野氏の説く仕事論の軸になっている。それは結果を得るためには変化を恐れるな、という以下の文からも強く伝わってくる。
「仕事で一番大切なのはあきらめず、結果を残すこと。そのためには、一度決めたことでも変更するようなしなやかさが必要だ。結果のためなら、変更はおろかプライドまでも捨てる執念がないと絶対に仕事を成功させることはできない」(P.122)
本著で紹介されている、杉野氏がしなの鉄道で実行してきた改革においては、社員や取引先に強い変化を強いた。それまでは常識・当たり前と思われていた取引先との契約内容をすべて見直し、無駄を排除し、経費削減・利益確保を実現している。そういう強力な変化を起こし結果を残すことは、仕事をしていく上でのひとつの醍醐味といえる。
もちろん改革には常に痛みが伴うものだが、杉野氏は社員に対して「ほんとつき」でいることで、その痛みを社員と共有している。
状況を包み隠さず伝えた上で、今後会社をどのように運営していくかを、社員全員で考えるべきなのだ。(P.170)
「結果が全て、そのためにはどんな変化も受け入れなければならない」、という強いメッセージを発しつつ、社員に嫌われながらも仲良し社長の道を選ばず、本当の意味で社員のためを思い行動している、そんな杉野氏の強さと思いやりが伝わってくる本著。最近仕事がマンネリ化して停滞気味かも、なんて思っているサラリーマンの目を覚ます、そんな一冊。